想 sougetu 月
「ねぇ……斎、どうしてそんなに怒ってるの?」
「……」

 私の静かな声が部屋に響く。

 斎が無表情であろうとも、怒っていることだけはわかる。

「一緒にいたのはシイナの彼氏だよ? 一緒にシイナを迎えに行っただけ」
「……」

 私が事情を話しても、ぴくりとも動かない斎。
 でも、何かを考えているようにも見える。

「斎に相談しないで一人暮らししようと決めたのは、斎が怒るのわかっていたからだよ。成人したら大人。いつまでも斎達に世話をしてもらうってわけにはいかないよ。いい加減、自立しないと……。斎だって逆の立場なら同じこと考えるでしょ?」

 もう私の世話から開放してあげたい。
 彼女が出来ないのは私のせいなのかもしれないと悩むのも辛い。

 斎のことを考えているように見えて、自分のことしか考えていない考え。
 そんな自分が嫌になる。

「……もうわかった」

 斎のかすれた声。

 わかってもらえたことが嬉しくなる。

「でも、もう限界……。煽られた気持ちは収まらない」

 何が限界なのか聞こうと口を開いた瞬間、唇に柔らかな感触と斎の顔が至近距離であった。
 まるで小さな雷に打たれたかのように、体が痺れる。
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