想 sougetu 月
 見下ろされる顔には表情がない。
 その顔を私も見る。

 私の部屋は角にあって。
 南側にベッドを横に置き、頭側の真横、西側に机を置いていた。

 斎は伸ばした私の手を掴んで引っ張り、引っ張られることによって椅子から腰をうかせた不安定な状態を利用して掴んだ手とは逆の手で私の肩を押して私は後ろにあるベッドに倒れているという状況だ。
 ひざから下はベッドからはみ出しているのか、床に足がついている。

 斎が私の上に乗っかっているのに、全然重くない。

 きっと斎が重くないように足に力を入れて、体重をかけないようにしてくれているから……。
 つまり、そういったことが考えられるくらい今の斎は冷静になっているってこと。

 さっきまでは私も慌てていたけれど秘密がばれたせいもあってか、斎が冷静なのを見て私も冷静になっていく。

 怒ることはかわっていたけれど、どうして私が押し倒されているのかがわからない。
 証拠を見せろと斎に言われたけれど、私には言葉以外にどう証明すればいいのだろうか。

 ……1つだけなら証明する方法はある。
 私は処女なのだから、えっちすればわかってしまう。

 けれど斎には特別なのか特別になりそうなのかはわからないけど、そういう女の子の存在がある。
 彼女の存在がなくても、斎にとって私は家族のようなもので血縁関係者だ。

 そんなことをすれば近親相姦になってしまう。

 法律上であろうとも、タブーとされる関係になろうという人はいない。
 しかもずっと一緒に住んでいたのだから、私への家族意識が強いはず。

 そういった事実が、まさか……という気持ちを打ち消す。
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