想 sougetu 月
 また斎にキスされる。
 けれど、今度は激しくなく、優しいキスで少しほっとした。

「舌出して、俺の舌に絡めて?」
「ん……」

 言われた通りに絡めようと舌を出したけど、絡める前に斎の方が私の舌に絡めてきた。

 丹念に、味わうように斎の舌が私の口内を動き回る。
 上手く息が出来ない私は、息をすることで精一杯だ。

 苦しさに、斎の服をぎゅっと掴む。

 斎は私と違って、余裕があるように見える。
 こういうことには慣れているのだろうか?

 そう考えたとたん、斎と一緒にいたという女の子の存在を思い出す。

 どうして斎は私にこんなことするのだろうか?
 あの彼女は?

 そんな疑問が次々湧き上がった。

 すべてを聞きたいけれど、聞くのが怖い。

 聞いたら斎は彼女の存在を思い出してこの行為は止まる?
 そう思うと、心にある感情が生まれる。

 タブーを犯したくないという気持ちと、斎を自分のものにしたいという欲求。
 反した想いに私は動けなくなる。

 でも私は知っている。
 私は利己的なのだ。

 わからないからと流された振りして、この行為を止めようとしない。
 悲しむかもしれない彼女がいるのに、未来のない誰も幸せにはなれない関係になろうとしている。

 だって私は斎だけを10年も想い続けた。
 これ以上想えないというほど斎を愛している。

 ほんの一時期でも斎の側にいたかった……。
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