想 sougetu 月
 少しだけ息を乱した斎は動きを止めて私を見下ろすと、縛られた場所に触れる。
 コードが解かれて手が自由になった。

「俺の背中に手を回してしっかり掴まるといいよ」
「ど……して?」
「たぶんこれ以上動いたら限界になる。そうしたらもうお前のことだけを気にする余裕がなくなるから」

 何が限界なのかわからなくて首をかしげる。
 そしていきなり斎が動きだした。

「あっ! あっ! ああん!」

 上下に激しく揺さぶられ、ついさっきまで痛みを感じていたのに、快楽へと感覚がすり替わる。

 自由になった手で斎の引き締まった胸を押してもびくともしない。

「ひっ、あっ! い、斎……」
「はあ……、あ……すごい……いいよ」

 段々と激しくなるピストン運動によって沸き起こる快楽を少しでも緩めようと、上下の動きについていこうとすればするほど斎の動きが激しくなっていく。

 揺さぶられる度、自分の中に快楽が生まれる。
 それは指や舌でされた時よりもずっと強い快感。

 深くて激しいキスに、どんどん息が上手く出来なくなっていく。
 空気を求めて大きく呼吸するけど、斎に与えられる快楽に何度も息が詰まる。

「はぁっ……んん!」

 どんどん追い詰められているような感覚。
 何度も味わったイク前の感覚に、足の指に力が入る。

 もっと快楽を感じようと、斎の舌から逃げようと押していた手を斎の背中に回し、しっかりと掴まると自然と腰が動き出した。
 
< 56 / 97 >

この作品をシェア

pagetop