想 sougetu 月

 未来のない関係。

 斎を好きになってから、私の幼い夢は斎のお嫁さんだった。
 いとこ同士は結婚出来ないと知るまでは……。

 斎と結婚出来なくても、こうして繋がることは出来る。
 
 きっといつかこの関係も苦しく思うようになることはわかっていた。
 未来のない関係を結べるほど、私は強くないのだから……。

 こうして1つになってしまったからこそ、もう斎への想いは口に出来なくなってしまった。
 斎への気持ちを口にすれば、それは1つの呪縛になる。

 10年間も想い続けてきたのだ。
 これから10年間想うことなんて簡単だが、これ以上の呪縛を増やすわけにはいかない。

 おじさんもおばさんも斎が普通の人生を送ることを望んでいる。
 当たり前のように結婚して、子供が生まれる人生を……。

 それを私が壊すことは出来ない。

 そう考えると、こういう関係になってしまったことを後悔するが、私には止められなかった。
 いや、止めようと思わなかったのだ。

 だって私は斎を誰にも渡したくないのだから……。
 斎が誰かと付き合って結婚すると想像するだけで、胸が苦しくなる。

 私は息を呑むと、そっと目を閉じた。

「はぁ、はぁ……。月子、大丈夫か?」
「ん……。」

 ゆっくり目を開けると、さっきよりずっと妖艶な斎がいた。

 形のいい眉が寄せられ、少しだけ節目がちな瞳に長いまつげの影が落ちている。
 細い唇は何度となく繰り返したキスのせいでいつもより赤い。
 その唇は唾液に濡れたのかてらてらと光っていた。
 
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