想 sougetu 月
 ベッドにばら撒かれていた1つを手に取る。

 それは先日行った真ん中誕生日のプレゼントを包装したラッピング紙だ。
 一緒に結んであったリボンも丁寧に畳まれ、汚れないようにビニールに入っている。
 他の物へ視線を向けるが、どれもこれもビニールに1つ1つ丁寧に入れられていた。

 それら全てに見覚えがあった。

 目の前に広げられているモノは、すべて私が斎にプレゼントしたものばかりだ。
 しかもそうとう昔のまである。

「俺が月子以外に一生心変わりしないって証拠だ」
「……斎」
「こんなものでも、お前がくれたものの1つかと思うと捨てられなかった……」

 斎は私が持っていたラッピング紙の入ったビニール袋を取る。
 メガネがなかったので視界はぼやけてはいたが、柔らかい光に照らされる斎の表情はすごく苦しそうだった。

「他に何をすれば俺の気持ちを信じてくれるんだ? 初めて会った時から月子は俺にとってお姫様だった。俺は姫にふさわしい王子になれるようにずっと努力してきた」
「……え? でも私は別に可愛くもないし、お姫様なんかじゃないよ……」
「俺にはそう見える」
「……」

 信じられないような斎の台詞に、一瞬で体中の血液が沸騰したかのように体が熱くなる。

 私が斎のお姫様?

 斎は王子様だって言ったら誰もが賛成するほどの容姿だ。
 それなのに努力してたって、どうして?

「最初は守ってあげたいお姫様だった。でも一緒に住んでいるうちに俺は王子にはなれなくて……、月子もお姫様じゃなく一人の女の子になっていた。俺はいつしか月子を俺だけの女の子だって思っていたんだ」
「ええっ!」

 思いもよらない告白に驚きの連続だ。
 斎が私を「斎だけの女の子」だって思ってくれてるなんて、全然わからなかった。
 
< 84 / 97 >

この作品をシェア

pagetop