想 sougetu 月
 好きだと言われていたので斎の気持ちはわかっていたが、どんなふうに私を思っていたかは知らなかったのですごく嬉しくてドキドキしてしまう。

 斎は一度目を閉じると今着ているシャツの胸ポケットから折りたたんだ紙を出し、それを私に差し出してきた。

「これは?」

 何かわからず斎に聞いてみたが、斎は返事をしてくれない。
 仕方なく私は差し出された紙を手に取り、広げてみる。

「え? これって!」

 驚くことばかり起きていたけど、こればかりはさすがの私も頭の中が真っ白になってしまった。

 斎から受け取った紙を信じられない気持ちで見る。

「これ……」
「……月子の誕生日に渡そうと思ってずっと持ってた」

 紙の左上には「婚姻届け」の文字。
 斎の名前も印鑑もすべて記入済みのものが2枚。

 紙を持つ私の手が震えだす。
 ここまで斎が私のことを大切に思ってくれているなんて気づかなかった。

 例えこの紙に法的な執行力がなくても、私には大きな意味がある。

「……ありがとう。これ、思い出として大切にするね」
「思い出って……、まだ俺の気持ちが信じられないのかよ!」

 誤解をした斎が苦しそうな声を上げる。

 斎の気持ちはちゃんと私に伝わった。
 そのことに気づいていない斎。
 
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