君がいるから
「あきな、それは……」
「最初に会った時より、今とキャラがぜんぜっ――うぎゃっ!!」
突然腕を引かれて変な声が出てしまい、再び力強い腕の中におさめられた事にすぐさま気づく。
「ちょちょちょっ、アディルさん!? 突然、どうしっ」
「…………」
「アディルさ、ん?」
背中に回した掌で、数回ポンポンッと軽く叩いてみても何の返答もない。離れようと体を捩るけれど、それを封じ込めるように更に腕に力が込められて身動きが出来なくなってしまった。
時折、綺麗な金の髪がサラリと揺れ落ちてくるのが、視界の端に入ってくる。
「――あきな、反則だよ」
「へ? は、反則って」
「温かい。あきなの香りがする」
「ふぇ!? ななっ」
「本当に君は可愛い」
(この方は、また何を突然!? 心臓が、破裂するようなことばかり)
「大丈夫だよ」
慌てふためく私の耳元に吐息と共に触れる声に、はたと動きを止める。
「そうやって、いつも俺の前で笑ってて」
「あの、アディルさん?」
「何があっても、君を――」
耳元で囁き聞こえたのは――何かを決心したような。
"俺が守るから"
そんな声――。
「ちょっと、待ったーー!!」
突如、歩廊に響き渡っては跳ね返ってくるようなそんな甲高い声に、体が驚きのあまりビクつく。
「なっなに!?」
慌ててもう一度、身を捩ってアディルさんから離れようとした時だった。
「あたしのアディルに何してんのよー!!」
その甲高い声が間近に迫って来ると察知し、一瞬にして顔が引きつる。まるで、油が切れたロボットのようにぎこちない動きでその方へ視線を移す。ダダダッと大きな足音を響かせて、猛スピードでこちらに突進してくるピンク色の頭の持ち主。
そして、目前にまで迫ったと同時に、思いっきり飛び上がった。
「今度こそ絶対にゆるさなぁーい!!!」
伸びた爪をむき出しにして、振り下ろす体勢のまま私を目掛けて急降下。
「ちょっちょっと、まっ――」
「アディルの傍から離れろー!!」
「きゃーっ!!」
恐ろしいほどに尖った爪を持った手が、顔目掛けて振り下ろされそうになった所を、寸前で何とか後退して避けた。