君がいるから


 シュタッ

 ピンク頭――じゃなくてシェリーは着地し、両手を着いてなおも飛び掛かる体勢へ。

「逃げんじゃねーよ」

「そんな形相で向かって来られたら誰でも、にっ逃げるでしょっ」

「お前、あたしのアディルに何してた!? 言え!」

「はい!? なっ何ってなに?」

「それをこっちが聞いてるんだ! この目で見たんだからなー! アディルに抱きつきやがって!! この猫かぶり女!!!」

(猫かぶりって、あなたが言うことですか!? っというか、私からしたんじゃないのにっ)

 彼女は猫や犬みたいにグルグルグルーっと喉を震わせて威嚇してくる。その形相もまるで鬼のようで、顔がひきつき足が一歩後ろへ。

「おっ落ち着いて!? あれは違うの」

「言い訳なんて聞きたくないんだよ!! 理由が何にせよ、あたしには関係ない! あたしに許可なくアディルに触る事は絶対に許さなーい!!」

(やっぱり、ややっこしい事になってしまった!!)

 聞く耳を持たないシェリーに頭を抱えたくなったけれど、みるみる内に小さなお尻が高く上がり、顎が床に着きそうなほどに低く、もうまさに自分目掛けて飛び掛る数秒前のよう。私はすかさず両手に拳を作り、足をもう一歩後へ。
 頭に血が上っている彼女は、私をきっと簡単に逃がすことはないだろう――。 固唾を呑んで一瞬も見逃さないように、相手を見据える。そうして、彼女が地を蹴ろうとした時だった――。

「シェリー、あきなを苛めないであげてくれる?」

 ピンクの頭にフワリと乗せた掌が、優しく左右に撫でている。

「アディルさん」

 片膝を着き、低い体勢のシェリーを赤い瞳で見つめるアディルさんの姿。 シェリーはそっと見上げると、次第につり上がっていた目元が垂れていき、最後にはとろりと目を細めアディルさんを見つめる。

「アディル~」

 甘えた声と共にアディルさんの胸に思いっきり飛びつく。
 今の今までの殺気は一体何処へ。でも、助かったぁと胸を撫で下ろす。

「アディル~、遊ぼう」

「まだ職務が残ってるから、まだ遊べないんだ」

「えぇー! やだやだっ」

 駄々っ子のように足をバタつかせて、頬には空気をたっぷり含んで見せる。

「アディル副団長。こちらでしたか」

 歩廊の奥から一人の騎士さんが、私達の元へと駆け寄って来た。


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