君がいるから
「聞いても意味ないと思うよ?」
「何故……」
「何故って。だってさぁ――」
その刹那――冷たく異様な空気の流れに飲み込まれたように私達は覆い尽くされ、背筋に悪寒が走る。レイの体を抱き寄せ、彼の背にある腕に力を込めた。
「もう、ここで君――」
恐い――ただ、その言葉だけが頭の中で支配され、繰り返されていく。妖しく上げられた口端から現れた赤い舌、手にしている剣の刃を見遣り、ねっとり舐め上げる様は異様。得体の知れない人物から目を離せず――銀の瞳が向けられ、途端背筋が凍りつく。
「死ぬんだから」
そう言い放った言葉と同時に手にしている剣を構え――。
「苦しまず、逝かせてあげるよ? だから、そこでじっとしてて」
「……いや」
「じゃ~行く――」
よ――っと唇が形を作り地を蹴り上げ、目にも留まらぬ速さで私達の目前に接近。驚愕、恐怖、絶望に支配された私の目の前で、銀髪の剣先が天を指す。
「さぁ、君はどんな感触がするのかな~」
「ぃっ……」
(体が――体が、動かない)
「いいねっいいねっ! その顔、たまんないよ!」
「ぃ……や」
視界が歪んで、唇がカタカタと震え。
「もっと見ていたいけど。残念」
無意識に頭が横方に振れ始め――。
「さよ~なら~、お嬢さん」
私達目がけて振り下ろされてくる刃から目を外し、レイの体を強く強く。
「いやーーっ!! アディルさん!!」
キィーーーーーーンッ!!!
耳につく金属が交わる音――いつまでも襲ってこない衝撃。そっと瞼を恐る恐る開き、無意識に固く瞑っていた瞼のせいで視点が定まらない。
ギギッ ギ、ギギッ
不快を感じさせる音に気づき、咄嗟にレイを守るように抱き寄せていた体を少し離し、背後をゆっくりと振り向く。
「えっ……」
振り向いた先の光景に――大きく目を見張り声が漏れた。
「てめーに、こんな場所で会うなんてなっ」
鮮やかな赤い髪。