君がいるから
予想だにしていなかった人物の姿に、驚きを隠せない。
ギッギギッ
膝を付き、上から押さえつけられる剣を2本の剣で受け止めている。双方の力を伝う剣の刃が嫌な音を立て、互いの力を押さえつける腕には血管が浮き震えている。
「ギル! 何でっ!?」
「あー!? てめー……何でだ、と!? つかな、俺様はその呼び方、許した覚えはねーぞ!!」
ギルは更に力を込め相手の剣を押し返し、相手とギルとの距離が開き、剣を構え視線だけを私の方へと向けてきた。その眼差しは鋭く、酷く不機嫌な様。
「勝手に船から降りんじゃねー!! それにな、俺様の名前に様をつけやがれ!!」
「そんなこと言ってる場合じゃっ」
「言ってる場合だ!! ったくよ……でもまぁ、今回は感謝するぜ」
今度は前方へと視線を戻し、目の前の相手を見据える。
「お前が勝手な行動を取ってくれたおかげで、こんなに早く――」
柄を握るギルの拳に力が加わり、革のグローブと柄が擦れギギュッと音が鳴る。
「まさか、お前に会えるとは思ってなかったぜ」
ギルの足元の隙間から垣間見れた銀髪は、無表情のまま首を傾げていた。
「はぁ?」
「俺様の顔に見覚えあるだろ」
「ん~?」
ギルの言葉に興味を持たないような態度で、目を細めギルを見据えた後――顎に指を添え視線を上へ移し考えるような仕草をする銀髪。
「ん~知らないなぁ」
「知ら……ないだと」
「……ギ、ギル?」
ギルの肩が怒りに震えている。
「ってめー……」
「その目から察すると、俺が"誰か殺した"のかなぁ~?」
「!!」
「まぁ、そう睨まないでくれるかなぁ~。俺さぁ~」
刃を口元まで上げると、先ほどと同じように舌で刃をねっとりと舐め上げる。そして、不気味に口端を上げ微笑む。
「切ってもつまらない奴らの事なんて覚えない主義なんだ」
「っ!! つまらない……だと」
「そう。あぁ、でも君は少しは楽しませてくれそうだね~。その瞳で分かるよ」
「あいつらは……てめーが」
「いいね、いいね~。ゾクゾクしてくるよ」
言いながら、銀髪は剣を持たない片手の指の骨を鳴らすように、異様な動きを繰り返す。