君がいるから
「自分の顔に何かついてますか?」
「いえいえいえっ。すいません!」
気づかぬうちに横に並び、騎士さんの横顔を凝視していたようで、それに気づいた騎士さんが振り向き微笑む。私は慌てて、前方へ向き直る。
「あきな様、そこ足元気をつけて下さい。まだ脆い場所なので」
歩き進める度に、私よりも先に危険な場所を察知して注意を促してくれる。本当にこの国の人達は優しくて温かい人達が多いんだと改めて思う。
* * *
「手伝ってくださって、ありがとうございました」
厨房へ案内してもらい辿り着いた時には、私が遅かった為にレイの昼食は冷めてしまっていて。温め直してもらい、騎士さんも手伝ってくれて、レイの部屋までやっと料理を運んでくることが出来た。
「自分は部屋の前にいますので、御用があればすぐにお知らせ下さい」
「はいっありがとうございます。あっそれとこれを……」
扉を開け入り、そこでレイの昼食が乗るトレーの上から、一つのカップを手に取り騎士さんへと渡す。騎士さんは、首を傾げ私を見下ろしてる。
「あの……これは?」
「ミファです。温かいのを淹れてもらいました。もしかして、甘いのはあまりお好きじゃなかった……ですか?」
「いえ。自分にこのようなお気遣いは」
「それならよかった。少し通路がひんやりしているので、体が冷えないように。なるべくお待たせしないようにしますね」
一礼して、部屋の扉を閉めようとした時――。
「あきな様!」
「っはい!?」
「その……ありがとうございます」
少し恥ずかしそうに、はみかむ騎士さん。そんな騎士さんの表情に、私もつられて表情を崩し頭を軽く下げ、部屋の扉を閉めた――。
「あんたは誰にでもそうやって愛想振りまくわけ」
「うわっ!!」
扉を閉めた途端に、背後から声を掛けられ思わず肩が跳ね声を上げる。振り向いた先、その犯人は言うまでもない。
「レイ……驚かさないでよ」
「別に。というか、ここにさっきからいたのに気づかないあんたが悪くない?」
「だったら声を掛けてくれてもいいのに」
「掛けただろ、今」
そう無表情で言い放ち、ふいと顔を背け本で埋め尽くされたソファーへと歩み寄って行ってしまう。私は、息を吸い吐き出し肩を軽く落とした。