君がいるから


「どうかなされましたか?」

「なっ何でもありませんっ! すいません、突然大きな声をあげて……それより、アディルさんからの命って」

「今日1日、あきな様の護衛にあたるよう命を受けました」

「護衛!?」

「はい! あきな様がお1人になられないよう、自分が付き添います」

「ちょっと待ってください! 私にそんな護衛だなんて、必要ないです。何でまた護衛だなんてことを……」

「理由はお聞きしておりませんが、とにかく今日は何処か行かれるなら自分が付き添います。副団長からの命なので」

「そんな悪いです。騎士さんもお仕事があるのに……」

「今から、あきな様をお守りするのが自分の仕事。護衛と言っても、お部屋の中までは入らないですし、部屋の外にいるので何かあればすぐ呼んで下されば、自分の出来る範囲でお手伝いもします」

 まっすぐな物言い、満面の笑みを浮かべ話してくる騎士さんの言葉に何と言って返したらいいか迷う。

(今日、また会えるなら、その時にでもアディルさんに直接聞こう)

「今から、どちらに行かれるんですか?」

「厨房の方へ。レイの昼食を取りに行く途中です」

「レイ様のお食事ですか。あの申し上げにくいですが、厨房は逆方向です、が」

(私って……つくづくなんてマヌケなんだろう)

(ここに来る前から、こんな感じだった? 由香や秋山は、こんな私の相手をずっとしててくれたかと思うと……頭が下る)

「あの……大丈夫ですか? どこか具合でも」

 頭を抱える私に、騎士さんが心配そうに顔を覗きこんでいる。我に返り、姿勢を直してぎこちない笑みを浮かべて誤魔化す。

「すいませんっ何でもありませんっ。元気そのものです、はははっ」

「そうですか。それでは、厨房の方へ参りましょう」

「案内よろしくお願いします……」

 騎士さんに頭を軽く下げ、先に歩き出した騎士さんの一歩後を歩く。背中を見つめ、おもむろに口を開く。

「あの……」

「はい、何でしょうか?」

「お手数をおかけして、申し訳ないです」

「あきな様はお気になさらずに。謝る必要も頭を下げる必要はありません」

 浮かべた笑顔は、爽やかという言葉がとても似合う。見た目は――ジンとそう変わらないくらいなのか。少し童顔で可愛らしい顔が印象的。


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