君がいるから


 かくんと頭を落としたアディルさん――気づくと、首筋に溜息を洩らした温かい息がかかっていて。

「あきなは俺のことをどう思ってるの?」

「え? どう……って」

「こうして俺の腕の中にいることは嫌じゃない?」

「嫌なんてそんなことっ」

 天井を見つめていた視線を右横に逸らすと金の髪が、視界いっぱいに映る。今度は耳元に添えられる温かい掌。

「嫌だったら……アディルさんと、その、キス……なんてしません」

 最後の方になっていくにつれ、声が掠れて消えていく。キスという単語を出すのが、すごく恥かしすぎて。

「そっか……」

「あの……アディルさんは……」

 私の言葉に顔を上げたアディルさんの瞳を見つめる。

(アディルさんは――私のこと、どう思ってるんですか)

 言葉は自分の声となってなかなか現れることはなく――それは自分自身でさ何故だか分からない。
 でもその代わりに、ソファーの上に置いたままの自分の両手をおもむろに持ち上げ、体に感じる重みに触れる。そして――そっと背に腕を回し包み込む。

「どうしたんだろうな……」

「……?」

「こんなに緊張してて、余裕がない自分が情けない」

 そう言って小さく笑うアディルさんへ言葉にしようとした時、唇が震える。何故なんだろう――自分でもよく分からない。

(何で? でも、とても心地いい)

 薄く開く自分の唇、ぎゅっと布地を掴む両の掌。


「……き、で、す」

 漸くか細く出た声は、静寂が漂う空間に消える。

「あきな……今」

 アディルさんが口を開くたびに、自分の唇にあたる息。この甘いひと時に酔ってしまいそう。静かに瞑った瞼――また口を開こうとすると震えてしまう。

「あなたが……好きで、す」

 アディルさんの耳元に囁く。すると、ふっと重みが無くなり、瞼を開いた時には視界に青色が広がっていた。そして、背中に感じる強くて優しい。ゆっくり視線を上げたら、私を見つめるアディルさんの柔らかな眼差しと出合う。
 
(あぁ……心臓が壊れてしまいそう)


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