君がいるから


   * * *


 ザクザクッ ザクッ

「この種はここに蒔いて下さいって」

「…………」

 明るく暖かな日差しの中、メイドさん達と一緒に荒らされたままだった庭園に花を植えたり、種を蒔く手伝いに来た私とレイ。私たちに任されたのは種を蒔く作業、いくつか街の人たちが持ってきてくれた花々を植えること。メイドさん達は掃除と花壇のレンガなどを直す作業をしている。

「また、綺麗に咲いてね」

「種に話かけるなんて変わってる」

 種を無表情で蒔いている、レイがふと言葉にする。

「そうかな? こういう風に綺麗とか可愛いとか、言葉をかけてあげると良いって聞いたことあるんだけどなぁ」

「あっそ」

 興味がないのか、ただ作業を黙々と続けるレイ。その姿に、私の頬が緩む。
 レイをこの場に連れて来た時は、メイドの皆さんは驚きの表情を浮かべていた。そうなるのも無理はないと思う。レイはずっと部屋に篭りっぱなしだったわけだし。メイドさんの1人が私の元に駆け寄り、どのような魔法の言葉をかけたのかと真剣な表情で聞いてきた。恐らく、これまで幾度となく、周りの人達は試みてきたのかもしれない。
 これといって特別なことはしてないと伝えたら、メイドさん達は更に驚きの声を上げた。昨日誘いはしたけれど、アディルさんの部屋からレイの部屋に直行した。既にレイは起床していて食事も終えていて、前置きをしいざ誘おうとした時、自らすたすたと部屋の外へ。その行動が前向きな答えだと示していた。それには私も驚いたけど嬉しさがこみあげた。

「何、人の顔を見て笑ってるの。失礼すぎる」

「ごめん、ごめん。今日はいい天気でよかったね」

「は? 全然理由になってないし」

 眉間に濃い皺を作るレイに対して、私はというと頬が緩みっぱなし。ふと、見上げた空は青々とし、時折吹く風も心地良い。視線を下げたら、私を見つめる碧い瞳の視線に気づく。

「ん? どうしたの?」

「また、あいつと何かあったわけ」

(あいつ?)

 首を傾げてレイを見遣ると、ふいっと視線を逸らされてしまった。

「誰のこと? レイ?」

「別に。ただの独り言」

「いや、気になる。誰? 誰のこと言ってんの?」

「あーもう煩い、とっととやれよ。そっちはあきなの担当だろ」


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