君がいるから


「ねぇ? 今なんて言った……?」

「人の顔じろじろ見て、何言ってんだよ」

「じゃなくて! もう一回言って!!」

「は? 人の顔じろじろ――」

「そこじゃなくてっ」」

 こっちを顔ごと向けて見ようとはしないレイの顔を、勢いよく興奮気味に覗く。

「今、あきなって言ったよね!? ね!?」

 レイは無意識だったのか、目を丸くする。自分が放った言葉を思い出したのか、顔をめいっぱい背えてしまう。私はというと、嬉しさでいっぱいになり、なおも食い下がる。

「ねっもう1回、言って言って!!」

「そっ空耳じゃないの。というか、言ったことあんだろ。それぐらい」

「空耳なんかじゃない、しかと聞いた聞こえた! それに、ずっとあんたとしか呼んでくれたことしかなかったよ!?」

 お願い、お願い――何度も強請る私に、レイはうっとしそうな――それでいて少し恥ずかしそうにも感じる表情。言葉を掛ける度に、白に近い灰色の髪で顔を隠していく。
 これ以上しつこくしすぎてしまうと、また機嫌をそこねかねないから止めといた方がいい――と判断。

「いつでも呼んでね。レイ」

「……マジで煩い」

「はい、はぁい」

 レイの表情が随分と明るく見える、無表情ではあるけれど。

「ふっきれたみたいだな」

「……ん?」

 ぽそり――呟いたレイの言葉はうまく聞き取れなくて、聞き返しても返答はなく、黙々と小さな花々の苗を不慣れながらも植えていくレイ。おの姿にまたも頬は緩み、私も作業を開始して種の上に柔らかく土を被せた。レイと並び、作業を順調に穏やかな雰囲気の中で進めてる時――突如、甲高い声が。

「あーーっいたーー!!

 この場にいた全員が声の主を探し、視線を定める。声の主は猛ダッシュで私へと突進して来ていた。

「このーー!!」

「へ!?」

 ものすごい形相の姿に、慌てて立ち上がる。逃げる間もなく私の目前に辿り着き、仁王立ちをする――ピンク頭のシェリー。

「一体全体あんたどういうつもりだよ!!」

「へ? 久々に顔を合わせるのに、怒らせるようなことしてない筈なんだけど……」

「しらばっくれんなっ!! 昨日、アディルの部屋で何してたんだ!!」

(昨日……アディルさんの部屋で?)

 シェリーの発言に昨日の夜のことを思い出し、顔に火がついた様に体温が一気に上昇してしまった。


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