君がいるから


「あきな様。シェリーが何やらご迷惑を掛けたそうで……申し訳ありませんでした」

「そんなことないです! ただ……泣いていたので。私が彼女を泣かせるような事をしてしまったようで」

「……実はここに来る途中で、シェリーとすれ違いました。その時、様子がおかしかったのものですから、気になりメイドの1人に事情をお聞きしまして」

 笑顔から眉を下げ、視線を落とす表情へと変わるジョアンさん。私も何と言っていいものか迷っていたら――。

「この後、少しお時間をいただけますか? お話したい事がございます」

「はい、大丈夫です。あの……話って、そのシェリーの」

「……後ほど、お話致します」

「分かりました」

「それでは、作業中お怪我をされませんよう、お気をつけくださいませ。後ほどお迎えに参ります」

 ジョアンさんはしとやかにお辞儀をし、この場から離れて行く。話の内容を気になりながらも、腰を落としレイの隣に並び作業を再開した――。



   * * *




「レイ様もあきな様もありがとうございました。お2人のお陰で早く終えることが出来ました」

 庭園へ抜ける通路の硝子戸の傍、メイドさんの1人が深々とお辞儀をし、私達にお礼を口にする。レイはメイドさんから顔を逸らしてる状態、私はメイドさんにお辞儀のお返し。

「とんでもないです。皆さんよりもやること少なかったのに、最後まで残ってしまって……」

「そんなことございませんよ。こちらは人手が足りなかったもので本当に助かりました」

 柔らかく微笑むメイドさんは、この後もまだやることがあるからと一言残して行ってしまった。その他の騎士さん達もメイドさん達も、それぞれの持ち場に戻っていたようだ。
 私を護衛してくれている昨日とは違う騎士さんが、私達から少し離れた場所で待ってくれている。
 ジョアンさんが来る前、レイに一つ言いたいことがあり、そっぽを向いているレイの前に立ちなおす。

「レイ」

「……何」

「メイドさんがお礼を言ってくれてたのに、何も言わないのは失礼でしょ」

「……は? 俺が言うことは何もない」

「はぁ……もう」

(いきなり変われって言うのも無理はあるけれど)

 レイは基本的にメイドさん達や騎士さん達には無関心。アッシュさんやアディルさん、それにジョアンさんには必要があれば話すようで。私には遠慮なし、これだけは確か。


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