君がいるから
バートルの羽は、現在でも高値で取引されており、それを狙っての虐殺だと推測された。
この種族に関わらず、ガディスの地に存在する数多くの種族もまた、人間の手により瞳や宝石に変わる涙、毛皮、金銀財宝を奪われていた。このことから、重罪とし法律を定めている国もある。古より定めている国の一つにシャルネイも含まれていた。
ラビトも狙われている一種族。バートルの血筋は女性と新たに生まれた混血の幼子のみ。バートルの最期――みな、羽を失くし無残な姿で息絶えていたという。
夫婦は幼子を連れ、このまま群れを離れ暮らすのは危険だと判断し、ラビト族の群れへ。
当初、バートルの者を群れの中に入れる事を拒む者ばかりだったが、夫婦は必死に懇願し理解を求めた。どんなに罵声を浴びせられようとも、地に顔を押し付けられようとも耐え抜いた――小さな命を守るためにと。夫婦の姿をラビトの長は、群れへ引き入れることを選択。だが、ここから、バートルの女性の地獄の日々が始まることを告げていた。
群れに入った日から、ラビト族の一切の世話を、バートルの女性へ押し付け働かせ続けた。女性は文句、愚痴一つも口にすることなく、懸命に毎日を生き続ける。しかし、女性のみならず嫌がらせの矛先は、幼い少女にまで及んだ。少女は同世代の子供達から厳しい言葉の数々、時に石や砂など投げられることも。だが、少女は母親の姿を目にし、涙を流すことはなかったという。
そんな折、父親である男性は自分にも飛び火することを恐れ、別の女性と縁を結んでしまった。その事実に、女性は初めて声が枯れるまで叫び涙を流した。
それから、数年が経ったある日のこと――。
遂にラビト族の群れにまで人間の手が迫ってきてしまった。だが、その事に気づくのに彼等は遅すぎた。
真夜中――皆が寝静まった時分、人間は静かに侵入し狩りを開始。ラビトは本来なら、人間の匂いや足音に敏感なのだが、これを知っていた人間は動物の血を塗り獣の皮を身につけたが為、察知が遅れたのではないかとのちに推測された。
しかし、バートルの女性は偶然にもいち早く人間の姿を目にし、着の身着のまま少女を連れ群れを離れたのだ。だが、人間はそれを見逃さず追っ手を放つ。
バートルの女性は体が弱っていて羽を使い飛ぶことさえ出来なくなっていた。
追っ手が背に迫る最中。女性は少女を草の茂みに隠し、陽が昇ったら迎えに来る――そう言い残し、その場から立ち去ってしまう。
しかし――陽が昇っても、女性が少女の元に戻ってくることは無かった。