夜明け前


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突然やって来た、双子の兄妹。


いや、そーから聞いてたらしいけど。


ドアを開けて視界に入ったのは、幼さがまだまだ残る少女。


その姿に、ある人の面影を見た。


ずっと忘れられない、憧れの人。


そーが連れて来た時点で誰かは気付いてたけど、目の前にすると、その人本人じゃないのにドキドキした。


清風さんの娘、か。


突然現れた俺に驚いたその子は、俺を見るなりこう言った。


『…綺麗な人』


その言葉は、俺が清風さんに初めてかけられた言葉。


親子なんだもんな。


もう会うことは出来ないその人に、無性に会いたくなった。


けれどその後、双子の兄貴の方を見てさらに驚いた。


清風さんの男バージョン。


そうとしか思えなかった。


中身が実は黒い所がよく似てるしな。


妹を溺愛する姿に、意地悪してやりたくなった。


彼女が部屋を後にした、気まずい空気の中、俺が口にした言葉。


そうなる原因はきっと、兄である彼に関係することだろうと、容易に察しがついた。


母親似で整った容姿、そこらの中学生など比べものにならない、大人びた雰囲気。


それに加えて妹思い。


嫉妬の嵐が妹に向くのは予想がつく。


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