夜明け前


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気付けば機嫌が悪くなっている珠花。


そして珠花を包み込むようにフニャフニャした笑顔で俺達を見ている千里。


悪魔に見える。


必死で珠花に話かけてみれば、俺達の言葉と態度で誤解させてしまったようだ。


「…珠花、違うんだ。珠花は本当に可愛いから、…その、変な奴に目をつけられないように、」


「…うんうん、そうだよしゅー、しゅーは自覚がないから、心配なんだ」


「…お姫様とケーキ、行きたいに決まってるだろ?」


もう必死。


その間もケタケタと笑っている悪魔。


珠花の頭を撫でながら。


軽々しく触るな。……俺だって抱っこしたことないのに…!


「………本当?」


少し機嫌が治まってきたような表情でそう聞いてくる珠花に、


「「「本当の本当!」」」


ハモってるキモーい、とかなんとか聞こえて来たけど、そんなのどうでもいい。


「……………、クスッ」


ん?ん?


「…ふふっ、ふふふっ」


あ、可愛い。


……じゃなくて。


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