夜明け前


「…もういいよー。ふふ。ちーちゃんが教えてくれたから。わかってる。……可愛いって言ってくれて、ありがとう」


ふふ、ちょっとびっくりした?そう笑う珠花がたまらなく可愛いんですけど。


……いや、ちょっとそれは置いておこう。


まんまと転がされていたわけだ。いい大人が。…朔乃は子供だけど。


でもなんだろう、この感覚。


…ふわりと、優しい気持ちに満たされる。


…珠花がそうやってからかって来たことが、なんだか嬉しかった。


…変かなぁ、俺。


…まぁ、変でもなんでもいい。


やんちゃしても、我が儘でも、甘えたでも。


気を許しあえる、そんな関係になりたいから。


「……もう一度、最初から」


やり直そう。


間違っても、失敗しても、何度でも。


大切な人が笑ってくれるなら、頑張れる。


「…まずは、そーちゃん、って呼んで欲しいよなぁ」


奏音さん、はなんだか悲しい。


どうやって自然にその話しを二人にするかだ。


そんなことを考えながら、楽しそうに笑う、二人の笑顔を焼き付けるように見つめた。


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