夜明け前
―しゅーは大丈夫かな。
学校からの帰り道、自然と足取りは早くなる。
担任から呼び出されて珠花を先に帰らせたけれど、少し不安がよぎる。
一人で大丈夫だろうか。
珠花はぐっと堪えて、一人殻に閉じこもってしまうタイプだ。
繊細すぎるし、優しすぎる。
だから自分が守らなければとずっと思って来た。
今はなおさらのことで、珠花が浮かべる寂しそうな表情が、いつも気にかかっている。
いつも不安な顔をしている。
口には出さないけれど、一人になることに怯えているようで。
だから一人きりにしないようにしていたのに、今日は一人で帰してしまった。
―早く帰らないと。
そう思って走り出す。
――母様が残してくれた、宝物。
大切にしろと、守れと言われた訳ではないけれど。
なによりも、誰よりも大切だから。
なにを差し置いてでも優先する。
俺がずっと珠花を守るから。
だから、いなくならないで欲しい。
俺には珠花しかいないから。