夜明け前


「図書室が遠い…」


歩いても歩いても、着く気配がしない。


「はぁ、…つらいな」


廊下を歩く足取りがすごく重くて、段々熱が上がって来た感じがする。


「つのぴーめ…」


―ちょっと休憩。


荷物を置いて、廊下にしゃがみこむ。


―さくに迷惑かけちゃうし…。


嫌だなぁ。ひどくならないといいのに。


「―ねぇ、本城さん」


「?」


―あ、相野さん…。


考え込んでいて人の気配に気づかなかった。


「ちょっと話したいことがあるんだけど、いい?」


右隣りに立って、作った笑顔で首を傾げる相野さん。


―なんかちょっと怖い。


「うん、ちょっとなら…」


「よかった。こっち来てくれる?」


「うん」


なんとなく殺気立っている彼女の後ろについて行けば、お呼びだしお決まりのトイレ。


中に入れば数人の女子がいて、舐め回すような視線を向けられる。


―居心地悪すぎる。


彼女達には全く見覚えがない。


< 59 / 145 >

この作品をシェア

pagetop