夜明け前


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授業が終わって、委員会の仕事を済ませてから、一緒に帰ろうと約束していた珠花を迎えに教室まで行った。


けれど教室には誰もいなくて、先に帰ったのかと思い珠花の机を確認すれば、まだカバンがかかっていた。


だから学校にいるのかとあたりを探したけれど見つからなくて、カバンを忘れて家に帰ったのかと家にも見に行ったけれどいなかった。


もう一度学校に探しに行けば、ちょうど門から出てくる珠花を見つけた。


けれどその様子はおかしくて、ふらつく足元に沈んだ表情。


走り寄って話し掛ければ、俺に謝りながら静かに涙を流す珠花。


珠花の姿を見ればびしょびしょに濡れていて、顔色は血の気が引いていて、震えていた。


なにがあったのかすぐに聞き出したかったけれど、珠花の性格上ゆっくり聞き出すしかないし、このままでは風邪を引いてしまう。


そう思って、早く家に帰ろうと珠花の手を握れば、尋常じゃない熱さを感じて驚いた。


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