夜明け前


聞けば、朝から体調がよくなかったようで、ずっと一緒にいたのに気づいてやれなかった自分に腹が立った。


珠花は自分ではつらくても痛くても我慢して人には言わないから、周りが気にしていないといつもひどくなってしまう。


それに母様に似たのか体はあまり強くない。だからよく風邪を引くし、必ずこじらせてしまう。


なのに最近色々なことがあって忙しくて、すっかり頭からそのことが抜けてしまっていた。


家に帰る途中も、背中から伝わる熱と珠花の苦しそうな息遣いが聞こえてきて、不安になった。


家について、珠花を休ませて、症状を和らげようと色々してみたけれど、状態は悪くなるばかり。


「…どうしよう」


病院に連れて行く?


だけど近くに病院はないし、連れて行くにしてもさすがに一人では連れて行けない。


タクシーだってお金がかかるから呼べない。


看病するにしても、治らなかったら、ひどくなってしまったら、どうすればいいんだろう。


「…っダメだ、俺がしっかりしないと」


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