夜明け前


二人がいるであろうアパートにたどり着いて玄関のベルを鳴らすけれど、なにも応答がない。


人の気配は外からは確認出来なくて、焦る自分がいる。


「いないの?…鍵開けていいかしら」


ドアの前で清風から預かった鍵をカバンから探していると、


「っ翔子さん!」


連絡を受けた清風の弟、そして二人の叔父である本城奏音が、息を切らしながらやって来た。


「二人は?」


「今、呼び掛けたんだけど中から反応がなくて…」


「そうですか…。鍵は?姉から預かってませんか?」


「預かってる。でも勝手に開けてもいいかしら」


「いいですよ。開けましょう。なにもなければそれでいいから」


「…そうね」


そう言って、鍵を差し込んでドアを開ける。


―カチャリ、ガチャン


ドアを開けて中の様子を伺えば、カーテンは閉め切られていて、物音一つしなかった。


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