夜明け前
スッと伸ばされた手は、私の手にあったチョコレートをさらりと奪って行った。
「あ、」
私のチョコレート!
かなり顔に出していたんだろう。
「ぶっ、かーわいぃ。はい、あーん」
ちーちゃんがケラケラ笑いながら、チョコレートを私の口に差し出して来た。
「……」
はぐっ。
「あはは、睨みながらも食べるんだ。いい子」
テーブルに肩肘をついて、私を覗き込むちーちゃん。
本当に綺麗。女の人でもこんな人いないなぁ。
「…美味しい?」
チョコを頬張りながら、頷くと。
「ん、それはよかった。好きなだけどうぞ。俺が買ったんじゃないけど。はい、あーん」
はぐっ。うまっ。
と、そんなやり取りを繰り返していた、が。
のんきにチョコレートを味わっている私の側では。
(え、おかしくない?なにあんたしゅーとイチャイチャポジションゲットしてるわけ?)
(やーだー。真っ黒さっくん)
(おい、なんでもいいから今すぐ殴らせろや)
(要くん粗暴ー)
(千里、家賃取るぞ)
(…鬼奏音。姪っ子に嫌われるぞ)
とゆう無言の(醜い)やり取りがなされていました。