夜明け前


「要、顔が緩んでる」


「おぅ、奏音。分かってるからほっといてくれ」


「…さっくん」


「なんですか?」


「あれだけ可愛いと、お兄ちゃんは大変でしょう」


「…そりゃあまぁ。ね」


「…朔乃。顔怖いぞ。けどこれからもその姿勢で行け」


「…そー、甘やかす気満々でしょ」


「…当たり前だろ。なんでもしてやる」


「その優しさ俺にも分けてよー」


「要、珠花返せ」


「しゅー、お菓子美味しいよ」


「?うん、要さん、お菓子食べて来る」


「おう。いっぱい食べてこい」


なんか、空気がパチパチしてる。


…皆笑ってるし、別になにもないんだけど。


(せっかく癒されてたのになんだよお前等)


(俺の姪っ子なんだよ、俺に懐かせる努力しろよ)


(俺の妹。珠花は俺の妹)


おかしいなぁ。


「ま、いいや」


そう割り切ってソファーの自分の席に戻って、目の前に並んだお菓子を手にとる。


すると、横から白くて線の細い腕が伸びて来た。


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