わたるんといっしょ
幾重にも重なる大ぶりの花弁は桃色。種類で言ったら牡丹に近い。
『まー、本当に?早いわねぇ。今日か明日には孵化してくれるかもしれないわねー』
「産まれた時って、どうすればいいんですか?」
雛ならば、自ら卵(殻)を破って出てくるわけだが、花から出流(いずる)妖精が水晶を叩き割る図は想像できない。
携帯電話を持ち直しながら、渉は曇天色の空を見た。
『特に何もする必要はないわよ。ただ、刷り込み作用で、最初に見た人を親だと思うだろうけどー』
刷り込みでハテナを浮かべたが、『最初に見た人を』の下りで、雛が玩具のガチョウについていく図を思い出す。
「僕が親、ですか……」
呆れつつ、朝の雨の名残たる湿った空気を吸う。折り畳み傘は持ってきたものの、使わないことを祈るばかりだ。