わたるんといっしょ


もともと静かな場所を好むわたるんにしてみれば、人々がごった返す祭り道を歩くのも憔悴してしまう。


祭りは今年行ったから、もう行かないと思っていたのだが。


『祭りあるなら、買ってこいや。なに、なんかもー、屋台の味が食いたいみたいなよぅ。ダッシュで行けよ、じゃなきゃ呪うぜぇ』


などと、居間で寛ぐ小悪党に頼まれてしまったのだから、断れなかった。


「藤馬(とうま)さん、ワガママだからなぁ」


僕より大人のはずなのに、とため息を一つ。


しかしながら、こうして頼まれることは嫌いではない。


例え、パシりであっても、小悪党が我が家の居間にいてくれるなら嬉しいし、楽しい。


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