わたるんといっしょ


気を取り直して、さっさと済ませようとわたるんは、休めた足を進めようとし。


「ちょいと、そこのわたるんさん」


なんか呼び止められた。


ニュアンス的には『ちょいと、そこのおにいさん』と女性が手招く感じなのだが。


「そこにいいもんありますぜぇ。俺といいことしねえかい?」


野太い声にわたるんは思わずしかめっ面をした。


「なにやってんですか、溝出(みぞいだし)さん」


「ばっ、ち、ちち、ちげーしっ!俺はあの、いけめんな大妖怪様とはまったく違う、ただの美青年だしっ!」


と言いながら、ハッピを着込み、頭に置いた七三分けヅラを整える……骸骨。


「溝出さん、肝心なところが隠れていませんよ」


< 3 / 454 >

この作品をシェア

pagetop