わたるんといっしょ
「風邪は引けるんですよ、僕」
だから寒さ対策をしているんだと、渉は鼻をすすった。
「もっとも、十三の時から風邪は引いていないので、曖昧な話ですが。風邪引いて、周りに心配かけさせるのが嫌なんですよ」
赤い鼻を軽く揉み、マフラーに顎を埋めた渉は、ますますもって人らしいと、新たな一面に好美は笑った。
「心配させたくない、か」
「はい」
「『僕なんか』の?」
「心配をしてくれる人がいるんで」
「いいことじゃん」
「なんでしょうね」
「心配されるの、イヤなの?」
「『心配をかけさせるのが』、です」
「違い分かんない」
「大好きだからこそ、心配をかけさせたくないだけてすよ」
それには多少なりとも、頷ける部分はあったが、実のところ、渉の真意は『僕なんかの』に尽きることを、好美は軽視していた。