わたるんといっしょ
胸がざわつく。
行かせてはいけないと、好美は掴む手を離さなかった。
「対処法あっても……、き、効かなかったら!」
「それを試すんですよ。――前に、出来なかったから」
ふとした呟きを聞いて、力が抜けるようだった。
「まえ……?」
「僕が、初めて出会った都市伝説なんですよ」
思い入れあるかのような響きにして、何か思い詰めたような声。
「あの時は、立っていただけだから……」
あの怪異を前にして立っていたという渉の正気を疑った。
いや、それよりも。
――何も、しなかった?
対処法も何もしなければ、好美が知る通りに、渉は引き摺り回されていたはずだ。
何もしなくても助かった。可能性としてあるならば。