わたるんといっしょ


「渉くん、いじめられているの……?」


いじめられっ子は、引き摺らない。


それならば何もせずとも、渉は無事でいられるだろうが。


「――どう、なんでしょうね」


表情こそは変わらないものの、声は自嘲の色を含んでいた。


「僕は“あれ”を、虐めだとは思っていませんから」


意味を聞こうにも、渉の足は進む。


斜面を下り、何の迷いもなく化物の行く手を阻むそのさまは、怖いもの知らずと言っても過言ではないが。


「わたる、く……」


彼自身が、怖い。


「渉くん……!」


自ら死地を歓迎するかのような、その――自殺志願者と代わらない姿勢が怖かった。


< 84 / 454 >

この作品をシェア

pagetop