わたるんといっしょ


「渉くんっ」


悲鳴上げるように好美が言ったのは、ひきこさんが近づいてきたからだ。


今の対処法も不発。ならば残りは鏡を見せるべきなのに。


「好美さん、行ってください、僕はいいですから」


“大丈夫”とは言わない渉に対して、好美はやっぱりと思った。


「死にたいのっ」


化け物前にして、何もしない。


逃げることはおろか、臆することもなく、化物(死期)が近づくことを良しとするその姿勢は――死にたがっているとしか思えない。


無理矢理でも一緒に逃げようと、好美は渉を掴む手に力を込めようとしたが。


「っ……!」


ばちん、と何かに叩かれた気がした。


好美がいきなり手を離したことに対して、渉は何か言いたげだったが、やはりとした面持ちで好美から目を離した。


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