【完】運命は罠と共に
「高木さんお待たせ。高木さんこそ彼氏に連絡とか要らないの?彼氏いたはずだよね?」


何気なく振った話題だったが、予想以上に彼女は動揺した。


もしかしてあんまり触れない方が良かった?



「ちょっと零させてください。今すごーく複雑な感じになってしまって、立ち往生中なんですよ」


「もしかしてそれで悩んでて、集中できてなかったとか言わないよね?」


沈黙する彼女に、図星かと確信した。


でも私には今の彼女を怒る資格はないんだよな。


私も新人の頃今の状況であれば、たぶん、いや確実に仕事でミスをしていたと思う。


5年という経験が、なんとかミスなく過ごさせてくれていただけだと思う。



「何があったかは知らないけど、私たちの仕事は患者さんの命を預かってるんだからね。謝って済むことばかりじゃない世界なんだから」


彼女に言っているようで、本当は自分に言い聞かせていた。


そうだよ。


患者さんの命を預かってるんだよ。


私のミスで患者さんを死なせていたかもしれないんだよ。


何事も起こらなかったことが、ラッキーだと思わなきゃ。



「ありがとうございます。お言葉に甘えて、報告書書きと勉強に付き合ってもらっていいですか?」


悔しそうに、涙を堪えながら話す彼女の姿に、私も気持ちを入れ替えようと改めて感じた。


それにこの子はまだまだ伸びるね。


ミスをしたときに、それを認めて向き合うことが出来るんだから。


私も向き合わなくちゃね。


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