私を壊して そしてキスして
小さ目のボストンバック一つ。
少しの着替えと、日用品だけ持って、私は家を出た。

部屋が見つかるまでは、彼のところにお世話になることになって。


母は、私の切羽詰まった状態に気がついていたんだ。
けれど、靖司さんに迷惑をかけた手前、何も言えなかったのかもしれない。

だから、すぐに行きなさいと勧めてくれもした。
反対されると思っていたのに。


何度も何度も翔梧さんに頭を下げて、私の事を気遣う発言を繰り返す母を見て、何だか申し訳なくなってしまった。

きっと、この婚約破棄で、母だって苦しんだと思うのに。


「心配なさらないでください。なにかあれば、すぐに助けを求めさせていただきますから」


そう言ってくれたのは、翔梧さんの優しさ。
きっと母の心配も、すべて分かっていて。



< 64 / 372 >

この作品をシェア

pagetop