私を壊して そしてキスして
暫く触れたままだった唇が離れていって、すこし怒ったような彼の顔。
「あぁっ、もう! 何で抵抗しない」
勝手にキスをしておいてそれはない。
だけど……抵抗する事なんて……。
むしろその温かみに救われたくらいで。
「ちょっと来い」
私の手首を引っ張って大通りまで出ると、タクシーを止めて私を中へと追いやる。
柳瀬さんがどこか住所を告げてすぐに走り出したタクシーは、キラキラと光るネオンの中を駆け抜けて――。
窓の外をぼんやりと眺めながら、さっきのキスの意味を考えてしまう。
菜那――。
あの時……彼がそう呼んでくれた時、その優しい声に打ちのめされてしまった。
少し前まで、あの人のそんな優しい声も、私のものだったのに――。