バイナリー・ハート


 ちょうどそこへ、ユイが出来上がった朝食を食卓に運びながら、二人に声をかけた。

 ロイドは食卓について、テーブルの隅にユイの作ったケーキが置いてある事に、初めて気付いた。
 おそらく、ゆうべ作ったのだろう。
 定休日にはいつも、何か作ってくれていた。

 ランシュの事と仕事の忙しさに手一杯で、ユイの気遣いに気付いてやれなかった事に罪悪感を覚える。

 ロイドは食事を摂りながら、何気ない調子で告げた。


「ユイ。それ、包んでくれ。持って行って間食にする」


 一瞬、何の事か分からない様子で、ユイはキョトンとした。
 そしてロイドの視線を辿り、ケーキの事だと分かったらしく、嬉しそうに笑って頷いた。


「うん」

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