バイナリー・ハート


 結衣の定休日には、夕食ばかりか、いつも作っているケーキも、食べられないからいらないと断った。

 ろくに話も出来ない日が続くと、以前から抱えていた不安が、心の中に広がっていく。

 ロイドがただ仕事で忙しいだけなら、こんなに不安にはならないだろう。
 ロイドは何か、ランシュに関係する問題を抱えている。
 そしてそれが解決したとは思えないからだ。

 日が経つにつれて、ロイドとランシュの関係が、やけに冷めている事に気が付いた。
 ランシュが蒼太と仲良くなるほど、それが浮き彫りになる。

 二人とも互いに、えらく素っ気ないのだ。

 二人とも蒼太に対しては、笑顔で穏やかに接するのに、互いに対しては無表情だ。

 別にいがみ合っているわけではないし、元々二人は友人関係ではない。
 とはいえ、蒼太よりも長く付き合ってきた割には、素っ気なさ過ぎる。

 二人の間に、結衣の知らない何かがあるとしか思えない。

 ロイドはランシュに対して、ヤキモチを焼いていると言っていたが、そんな単純な事ではないような気がする。
 第一そうだとすると、ランシュの態度に説明がつかない。

 訊いても、多分答えてはくれないだろう。

 ランシュに関する事は、局がらみの事ばかりだ。

 一緒に住んでいるのだから、できれば仲良くなってもらいたい。

 けれど仲違いの原因を、知る事が許されない自分には、どうしようもない。

 結衣は改めて、自分の無力さを痛感した。

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