バイナリー・ハート
結衣はランシュの手を取り、両手で包んだ。
「お願い、ランシュ。勝手に出て行ったりしないで。私と一緒に住むのは、あなたの方が辛いのかもしれないけど、ロイドとちゃんと話し合ってみて。私は局の事には口出しできないから、ランシュが自分で話して。二人で考えれば、あなたが身を隠さなくてもいい方法が見つかるかもしれないし。今のまま出て行かれたら心配なの。私の自分勝手なわがままだとは思うけど」
自分の手を握る結衣の手を見つめて、ランシュがためらいがちに小さく頷いた。
「……ユイがイヤじゃないなら、出て行かないよ」
ランシュの言葉を聞いて、自然に笑顔がこぼれる。
そんな結衣を見て、ランシュもつられたように少し笑った。
「じゃあ、お茶淹れるから座ってて」
「うん。ありがとう」
そう言ってランシュは、キッチンを出て行った。