バイナリー・ハート
ランシュはまた俯いて、寂しげに言う。
「ユイはオレの心がここにあるって言ったけど、実際のところ、オレにはよく分からないんだ。オレは身体を乗り換えて、生き続けているつもりなんだけど、ロボットに心や命があると思うのは、間違ってるのかな」
「そんな事ないわよ。ランシュには確かに心があるもの。ロイドは今日知ったばかりだから、きっと混乱しているのよ。お互いにもっと話をして、ランシュの事よく見たら、ロイドにも絶対分かるはずよ。あなたたち会話がなさ過ぎるのよ」
そう言って結衣が背中を叩くと、ランシュは面食らったように目をしばたたいた。
「うん。まぁ、確かに会話はあまりないね」
「でしょ? 昔のしがらみは捨てて話してみれば? それこそ今のランシュが昔のランシュの真似をしているわけじゃないって事の証明になるんじゃないの?」
ランシュは一瞬絶句して、目を見開いた。
「そっか」