バイナリー・ハート


 だが免職になったランシュは、局に戻ってもする事がない。
 おそらく以前のように、部屋に軟禁状態になるのだろう。

 ランシュがポツリとつぶやいた。


「何が違うんだろう。昔のオレの方が、よっぽどロボットみたいだったのにな」

「え? そうなの?」

「そうだと思うよ。人付き合い悪かったし、どうせ長く生きられないからって冷めてたし」

「私には想像できない」


 今のランシュはよく笑う。
 優しくて親切で、色々と気遣ってくれる。
 それは今のランシュに心があって、人の気持ちが分かるから、そういう心遣いが出来るのだと思う。

 ロイドはヒューマノイド・ロボットに、感情がないと言っていた。
 今のランシュと深く付き合っていないロイドには、ランシュが昔のランシュの記憶を頼りに、真似ているだけのように思っているのかもしれない。

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