バイナリー・ハート
「なぜ、謝る?」
「だって、あなた忙しいのにランシュが心配だから、無理して早く帰ってきたんでしょう? なのに私、はしゃいじゃって……」


 心配していたのは、ランシュよりユイの方だ。
 自分の態度がユイに無用な気を遣わせてしまったようだ。ロイドはひとつ息をついて項垂れた。


「いや、おまえに非はない。少し苛ついてて、オレの方こそ大人げなかった」


 ふとランシュが気になって、ロイドは顔を上げて問いかけた。


「あいつは?」
「もう休んだわ。ここの向かいの部屋を使ってもらう事にしたの。よかった?」
「あぁ。かまわない」
「じゃあ、私、明日も早いから、先に寝るわね。おやすみ。仕事、頑張ってね」
「おやすみ」


 ユイは微笑んで、そのまま部屋を出て行った。
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