バイナリー・ハート
 以前大きな器で作ってもらったら、表面だけ先に食べてしまって後が寂しくなったので、それ以来、あえて小さな器でたくさん作ってもらう事にしている。

 すぐにでも食べてみたかったが、食後の楽しみに取っておこう。

 ロイドは買ってきた食材をキッチンに運び、猫の額ほどの小さな庭に出た。
 植えた覚えもないが、以前から生えていたハーブの芽を少し摘んでくる。

 以前は伸び放題の雑草に覆われて、見分けが付かなくなっていたが、ユイが手入れをして、少しは庭らしくなっている。
 今はお菓子に使うミントや木イチゴ類が、新たに植えられていた。

 キッチンに戻ったロイドは、ユイのリクエストに応えて、買ってきた魚を調理する。

 しばらくしてロイドの作った夕食が食卓に並び、二人で食事を始めた。

 お互いの一日の出来事を話しながら、楽しそうに食事をしていたユイが、ふと浮かない表情を見せた。


「どうした? 口に合わなかったか?」


 ロイドが問いかけると、ユイは慌てて笑顔を作る。

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