騙されてあげる~鬼上司に秘密の恋心~
「ひどいよぉ、麻菜ちゃーん。頑張った僕にご褒美くれてもいいのにぃ」
「うるさい。麻菜ちゃん言うな。それと語尾伸ばすな」
バシッと言いきると、ブスーッと拗ねた表情をするジョン。
「麻菜ちゃーん」と泣き真似をするジョンを、また面倒くさいなぁと思う。
「だってあのSTAR-MIXからも、直接僕によろしくって言ってきたんだよ」
「へぇー。さすが天下のジョン様」
「その呼び名懐かしいけど、あんまり嬉しくない」
アメリカで働いていた頃、ジョンが呼ばれていたあだ名がこれ。
本店にはジョンの同級生も何人か勤務していたんだけど……
エリート組のジョンは、「天下のジョン様」だったのだ。
「でもよかったなぁ、許可が下りて」
そう、わたしが店長とジョンに出した提案がこれだったのだ。
STAR☆店よりも小さいサイズを売りにしているSTAR-MIXの衣服を、日本店にも並べるというもの。
まさかこんなにすんなり許可が下りるなんて。
素直に嬉しかった。