騙されてあげる~鬼上司に秘密の恋心~
何が「ということで」よ!!
誰も一緒に行くなんて言ってないじゃない。
全く、ジョンったら……いつもいつも自分勝手で何でもかんでもわたしの意見は無視なんだから。
こういう時は、放っておくのが一番。
ジョンとの長い付き合いで、これが学んだ教訓だ。
「あっ、それからジョン?」
「なに?」
「職場ではわたしのこと“麻菜”じゃなくて、“加藤”って呼びなさいね」
「え~!?なんでよ?いいじゃん、“麻菜”でも」
子供のように駄々をこねるジョンに、わたしは彼に吐いた何度目か分からない溜息を吐いた。
地下鉄の中で、周りの人たちは「異様なカップル」というような目でわたしたちをちらちら見ていた。
彼女に駄々をこねて困らせるダメ彼氏とそんな彼氏を冷静にかわす冷たい彼女。
きっと周りの人たちはこう考えていることだろう。
でも、わたしたちは決して恋人同士ではないから、そこは声を大にして言いたい。