騙されてあげる~鬼上司に秘密の恋心~
「な、かもりさん!」
「頼むから……避けるなよ」
その声があまりにも切なくて、心がギュッと締め付けられるように痛い。
こんな風に抱きしめないで。
仲森さんはいつもこうしてわたしの心を乱す。
「仲森さん……隣、ジョンの部屋なの……見られちゃう」
どうにかしてこの腕から逃れようと、もぞもぞ動いてみたが、どう足掻いても離してはくれなかった。
「ジョンには見られたくないって?誤解されたくないから?何だよそれ……」
「え?仲森さん?」
「それでも俺、諦めないから」
さらに抱きしめる力を強めた仲森さんが、絞り出したような声で言った。
耳元で、かすれる声が……くすぐったい。
「絶対諦めない」