騙されてあげる~鬼上司に秘密の恋心~
「え?幸さん?何か言いました?」
「いーえ、何も。ただ面白くなってきたなぁって」
何か楽しいおもちゃを見つけたように、幸さんはふふふっと笑った。
幸さんってたまに分からなくなるんだよね。
全てを見透かされているようで怖い気もするんだけど……
そんなことを考えていると、再び仲森さんの攻撃が始まった。
「麻菜」
もう閉店時間を過ぎていて、何人かの店員もまだ残っていた。
そんなところで、わたしの名前を呼ぶものだから……
全員の視線がわたしたちに集まった。
隣にいる幸さんを見ると、クスクスとまだ笑っている。
「今日、話があるから。下で待ってる」
仲森さんはそれだけわたしに言うと、全員に「お疲れ様です」とだけ言ってショップを出ていった。