騙されてあげる~鬼上司に秘密の恋心~
「今日はナビ間違えるなよ」
「分かってるって……あっ、さっきのとこ左折だったみたい」
「言ってる傍からかよ」
「秀ちゃん、早く左左!」
「早くっつっても、ここは右折しか出来ねーよ」
この調子だと、今日も大阪に着くのは難しそうだ。
ナビって意外と難しい。
「あっ、秀ちゃん!鹿がいる!」
「そりゃあ、いるよ。ここまだ奈良だし」
「鹿かわいいね!初めてみた!」
写真写真と言いながら、ケータイを取り出すわたし。
それを見て、秀ちゃんは再び笑った。
「ぷっ、さっきから悩んだりはしゃいだり、忙しいな」
小さく笑った彼が朝日に照らされて、胸がキュンと高まった。
最近の秀ちゃんはよく笑うと思う。
笑った秀ちゃんは、本当にかっこいい。